林健二 原朋子 二人展

2017年9月16日(土)−10月1日(日)
*会期中の25(月)・26(火)はお休み致します。

林さんと原さんの在店日:16(土)・17(日)

お二人の器を並べてみると、
少しずつ重なりあう世界観が
あるように感じられます。
約3年半ぶりとなる二人展。
美しい器形に多彩な表現を
ご覧いただけることでしょう。


林さんの白釉楕円皿(上)は25.5×19cm。
  原さんの染付皿(下)は径24cmです。

愛知県瀬戸市で作り手としての活動を
始められたお二人。ご結婚後も変わらず、
それぞれの工房で制作をされていましたが、
1年半ほど前に、林さんの出身地でもある
東京の練馬区に工房を構えられました。
その工房に先日お邪魔をしています。

最初に通していただいたお部屋は、素敵な空間のギャラリースペース。
器以外にも気になる部分が多すぎて、なかなか焦点が定まらない
状態に・・・ その後それぞれの工房を案内していただくのですが、
結局その興奮は帰るまで冷めないままでした。

入った正面に轆轤があり、その奥に釉薬と粘土の棚。更にその奥には
彫刻作品のようなものがずらりと整列しています。独学で作っていると
言う石膏型です。棚と向かい合う場所に、器をのせたさげ板を渡す
パイプが設置されたコーナーがありました。

〈林さんの工房〉

捻り文や輪花、リム部分に施す装飾は、やわらかな膨らみのある、
細部も美しいもの。皿類は板状にした粘土を石膏型に押し当て、
見込みの深い鉢などは、轆轤でひいた器を型に押し当てているの
だそうです。そして動植物をレリーフ状に浮き上がらせている林さん
独自の模様は、その石膏型に模様を彫り込み、氾にしたものを押し
ているそうです。氾の繊細な彫痕を目にすると、緊張感も伴う根気
のいる作業だとわかります。

出来上がっている物、これから本焼きをする物が並んでいました。
(まだお見せできない物も別室にあるとのこと) 白釉、白磁、
青白磁、掛分け釉(飴釉)などの品々をご用意下さるそうです。
釉薬の調合が好きで、目的なくテストピースを焼くそうです。
釉薬先行で、それに合わせて形を作るケースも多いんだとか。

右上:現代美術作品?近づいてみると、トンボ(器の口径と深さを
同時に測れる十字になった道具)がささる発泡スチロールでした。

右下:動物好きの林さん。眺めている図鑑を発見。ツバメ、ハチドリ、
コウモリ、カモ、グッピー、名前不明の魚類にゾウやパンダと、模様
となっているものが多いです。只今原さんに数冊貸し出し中だそう。

共有スペースの水回り、窯場、風が通り抜ける半屋外のような干場
(さげ板が渡せるようになっている)。窯を移した直後だけ、電気配線
の不具合で温度が上がらないトラブルはあったりしたそうですが、
その後は順調に窯焚きができているそうです。
いつもなら愛猫の姿がある場所のようですが、この日は納戸に隠れ
てしまっていたみたいです・・・ ご挨拶できず残念!

〈原さんの工房〉

轆轤は部屋の奥にある配置。入口付近に並ぶさげ板の上の器がまず目に
飛び込んできます。以前店にいらして下さった時に、お客様からうさぎ文の
リクエストをされていた原さん。それに応えられたようで、器にうさぎがたくさん
跳ねていました。鮮やかな呉須の色が特徴的とも言える原さんの染付で
すが、展覧会ならではのお品として、それとはまた異なるものをご用意下さ
るとか。土と釉薬を変え、その素材感も生きる絵付けを考えられたそうです。
軽やかな筆致で、より絵画的に描かれている文様のものがありました。

参考にされている図録や画集などが高く積まれていた、絵付け作業を
されている机。何種かの呉須を調合し、原さんが求める色味にしている
そうです。絵具皿は林さんの小皿で、乳棒は原さん作(鳥などの絵付け
あり)のかなりのレアセット。壁にあったラフスケッチ(印刷物の余白に描
いていたりする)は額装したくなるほど素敵でした。確かな画力です。

実演していただきました。竹紙と言うトレーシングペーパーの様な
半透明の紙に、岩紫と言う染料で絵柄を描きます。器にその紙を
当て、水を含んだ筆で絵柄をなぞると、器に転写ができるのです。
あら不思議! (画像は薄いですがもっと濃く写るらしい)
この1枚で15回ぐらいは繰り返し転写ができるそうです。

〈散歩〉

お二人がよく行かれていると言う公園に連れていっていただきました。
雑木林が池を囲むようにあり、周囲にある建物が一切見えないので、
高地にある池を眺めているかのようでした。水面に映る葉影が美しく、
鴨の泳ぐ早さに驚き、カワセミの可愛い飛行姿も見ることもでき感動。
お二人のモチーフもここにはあるようです。

林健二
1971年 東京都生まれ
2004年 愛知県立瀬戸窯業高校 陶芸専攻科卒業

原朋子
1983年 長野県生まれ
2006年 東海大学教養学部 芸術学科美術課程卒業
2008年 愛知県立瀬戸窯業高校 陶芸専攻科卒業
2010年 愛知県立芸術大学大学院 美術研究科修了

お二人はご自身このことを、カラ振りをしながら攻め続ける
タイプだと林さん。想像のできる範囲から出ない守りの
タイプだと原さん。しっかりバランスがとれていて面白いです。
店主は林さんを長期熱中型の研究者肌、原さんを短期集中型
の感覚派ではないか(?)と勝手な分析をしています。

どこかロマンティックな雰囲気と品があり、
ジンワリと和ませてくれるユーモアも隠さ
れている。お二人の器に共通して感じます。

home/newsのページにもどる
exhibitionのページにもどる