長谷川 奈津 陶展

2006/6/10(土)〜17(土)
会期中無休
作家在店日、10、11日

優美でありながら、力に満ちた器。
自分の成すべき道を見出し、
その志を貫く精神の強さが、
長谷川さんの器の奥深い美しさを
生んでいるのだと感じます。
そして、料理を盛ってまた知る、
長谷川さんの器の美しさです。
大切に使い続けたい器に、
きっと出会っていただけることでしょう。

5月下旬、青葉が茂り、吹く風が
気持ちいい、長谷川奈津さんの
工房にお邪魔してまいりました。

今回の展覧会で見せていただける
器のお話や、器が出来る工程など、
そして長谷川さんの今までの道程を、
改めて伺いました。聞き忘れて
しまったのが、これからの事。
これはまたの機会にいたします。

今回の展覧会では主に、
従来の土を使った粉引と刷毛目を。
そしてここのところ取り組んでいる、
水簸せず、小石のゴロゴロ混じる、
伊賀の原土を使った迫力のある粉引を
ご用意いただけるようです。同じ粉引でも、
土と焼きにより、だいぶ趣の違う物に
なっております。また、轆轤をひいた後、
更にたたいて成形をする[たたき]の器も
登場する予定です。見ごたえのある
展覧会になるかと思います。

器の乗ったさげ板を
ヒョイとかついで表へ。
器を天日干しする
所まで運びます。

浅鉢が庭で干されているところ。
じ〜っと見ていると目が回りそう。

主に素焼きをしているという
小さい灯油窯。最近この窯で、
薪を併用して焼いたりしているそう。
火前と火後で、器の表情がだいぶ
違い、少しだが、面白い物が
焼けるんだそうです。
薪が集められていました。

窯詰めされた様子。
手前の物は、
これも新たな試みで、
線刻を施した物。
これは、上手く焼ければ、
お披露目となるそうです。
『上手く焼けます様に・・・』

こちらは本焼きをしている
ガス窯になります。
今頃火が入り、ジワジワと
焼かれている事でしょう。

長谷川 奈津  はせがわなつ

1967年 東京生まれ
1994年 東京芸術大学大学院
       陶芸専攻 修了
1997年 神奈川県津久井郡
        藤野町に築窯

[番外]

「長谷川さんちの、今日のワンコとニャンコ」

ムツゴロウさん状態の長谷川さん。
ロクの哀願する様な表情が可愛い!
いつも囁く様な声で話をされる
長谷川さんが、ロクとハナがじゃれて
大暴れした時に、声を荒立てたのには
ちょっとビックリ。初めて聞いた
長谷川さんの大声でした。

お外が好きなハナ。
灯油窯の足場を
掘ってしまい、
長谷川さんを困らせている。
いつか窯が傾きそうだと・・・

ちょっと太めで、
ダイエット食にされているのはロク。
もの足りないらしく、ハナの
ご飯まで食べてしまう。

これぞ猫に小判。豚ではなくて犬に真珠。
長谷川奈津作、丼に盛られるペットフード。
贅沢ですね〜。

帰り際に姿を見せてくれたのはコタロウ。
外にでたかったのに、
ガラス戸を閉められてしまって、
すごいにらみをきかせています。

餌のおねだりが
上手なコジロウ。
本物の猫なで声でした。
本当はスマートです。
角度が悪かった。

伊賀の土を使った粉引大鉢になります。

[左上]轆轤をひきながら取り除いた、原土に混ざっていた石。結構大きな物もありますね。
[右上]蹴轆轤の説明をしてくれている長谷川さん。
[右下]独立した8年前から、この工房にある欅の蹴轆轤。とてもしっかりしている物です。

左/粉引と焼き締め。
右/既に焼き上がっていた器。

化粧掛けされた碗。
長谷川さんは[生掛け]
と言って、成形し終わった
生素地の状態に、化粧土を
掛けています。その方が、
馴染みが良いからだそうです。

左/カラフルなバケツが庭先にいくつも。
中には、釉薬にする為の灰が、
不純物を除く為、水簸されていました。
長谷川さんの器の要ともなる大事な灰です。
(雨ざらしで、そんな大事な物には
一見見えないかもしれませんが・・・)
氷が張る前に、漉して使えるように準備して
おく。冬が来る前にしておく仕事だそうです。
右/長谷川さんの美しい刷毛目を生み出す
刷毛の数々。こちらも大事な道具です。

[作りたいものを生み出す道具と準備]

長谷川さんは、電動の轆轤(ロクロ)
ではなく、足で蹴って回す、
蹴轆轤を使っています。
引く時に、力を入れ過ぎると、
電動轆轤なら止まらない回転が、
蹴轆轤では止まってしまう事がある。
なので、力を入れ過ぎないよう
加減をする。そこで生まれるのが、
長谷川さん独特の、あのやわらかな
器の表情のようです。もちろん、蹴轆轤の
作用だけではなく、様々な働きかけが
あって、生み出されているのですが。

話をしていても、
大袈裟な表現をしない、
飾らない人。器と同じかも・・・
ご自身の湯呑みを前にして。
お茶の色がきれいです。

伺った時、学生時代に作ったという碗を
出して下さり、今とは少し違う作風に、
見た瞬間は笑いが思わず出てしまった
のですが(失礼しました)、でも手に取り、
触れて眺めていると、これが意外と
いいのです。とても初々しい感じ。
(撮影はNGが出てしまいました)
後に長谷川さんが弟子入りをする
青木亮さんは、この器を見て、
長谷川さんがやりたい方向性と、
それを上手く表現出来ずにいる事に気付かれ、
声をかけて下さったんだそうです。

未熟さの中にも、長谷川さんの資質を、
青木さんは見抜かれたのではないでしょうか。
その青木さんは、残念なことに昨年
亡くなられてしまいましたが、
青木さんの教えは、長谷川さんの
大きな支えとなり、生きづいでいるようです。

exhibitionにもどる