田谷 直子 陶展

2008/6/21(土)−28(土)
会期中無休
作家在店日:21、22日

田谷直子 たやなおこ

1973年 神奈川県生まれ
1997年 明星大学日本文化学部
       生活芸術学科 陶芸専攻
       研究生 修了

同年より 神奈川県相模原市津久井町にて、
       陶芸を始める

料理を盛り、日々使う中で、
魅力がより増していく器があります。
「用」と「美」の天秤がつり合うは案外少なく、
手放せない器へとなっていきます。
そんな器を淡々と、そして伸びやかに作り、
真摯に焼物と向き合う田谷さん。
シンプルで使いやすいと評判の高い
ポットに急須、汁注などの注器類。
灰釉、ルリ釉、長石釉に象嵌。
そして薪窯での器が並びます。
静かに期待がふくらむ展覧会です。

関東では、例年より少し早い入梅となった日、
神奈川県相模原市にある
田谷さんの工房を訪ねてまいりました。
「津久井城」という城が戦国時代にはあったと言う山、
津久井城山の麓で生まれ育ち、今もその地で暮らし、
制作をされている田谷さんです。
緑豊かで空気が澄み、とても気持ちのいい所でした。

木立と棚(植物用)をくぐった
奥が田谷さんの工房です。
ガーデンテーブルと
チェアがその前に置かれ、
緑の中でくつろげるように。
これでは、休憩タイムが
楽しくてたまらないのでは
ないでしょうか。羨ましい・・・
なんか避暑地の様です。

田谷さんが、子供の頃駆けずり回っただろう庭に、今はお母様が育てていらっしゃる草木が茂り、
花が咲き誇り、ちょっとした植物園の様になっていて、花好きにはたまらない場所が広がっていました。
今日の目的をそっちのけには出来ず、さらっと見ただけだったのですが、すごい数の植物でした。
帰り際、お母様がたくさんのお花を持たせて下さったので(お野菜なども)、お店に飾らせいただきました。

庭に立派な蔵があり、
田谷さんの器を、
後生の人がここで
手に取り、祖先に
思いを馳せる事が
あるのかもしれない。
などと、勝手な思いが
めぐりました。
100年後なのか、
200年後の事なのか・・・

注目される事が苦手だと言う。正直で自然体。同調しない強い意思も、
ふと感じることがあります。器にはそんな人柄がよく出ているかもしれません。
カメラを向けると照れて、目線を逸らされてしまった。寸前まで大口を開けて笑っていたのに・・・
新作のサーモンピンクの湯呑みを使う田谷さん。貫入に茶渋が入りいい表情になっていました。

工房の裏手、後方にひょっこり
頭を出しているのが、城山です。

大学の4年間と研究生の1年を、
陶芸専攻で過ごした田谷さん。
それは、焼物に夢中になり、
楽しく、充実した時間だったようです。
当時は、焼物で身を立てようといった、
強い決意があった訳でも無く、
ご本人曰く、何にも考えてはいなかった
そうですが、そんな田谷さんに、
同じ津久井で制作をされていた、
今は亡き、陶芸家の青木亮さんとの
出会いがあり、少しずつ
田谷さんの意識も作る物も変わり、
今へと繋がって行く事になったようです。
青木さんの薪窯の手伝いをしたのを機に、
青木さんは、週1の講義(田谷さんは
こう言う)と田谷さんの器の講評の時間を
作って下さり、そんな時間は、青木さんが
亡くなるまで、2年ほど続いたそうです。
以前、店主が勤めていた器屋の展覧会に、
青木さんが田谷さんといらっしゃったのが、
店主と田谷さんとの初対面で、聞くと、
この日が青木さんの授業の初日だった
そうです。店主はその時の田谷さんを
よく憶えています。TシャツにGパンで、
飾らない姿の田谷さんがとても印象的で。
(実は作業着だったらしいのですが)
そして、穏やかで、独特の空気感の
田谷さんがとても気になったのでした。

薪窯で焼かれたルリ釉の蓋物。
女性の手による物とは思えないほど、
力強くて凛々しいです。

元は物置だったという所を、
田谷さんは工房にしていました。
大学卒業し、半年後には窯を買い、
ここで制作が始まったそうです。

これから焼かれる物が並びます。

原土を水簸しているところです。
この後、違う土とブレンドして、
田谷さんの焼物の土となります。

轆轤の周り。きちんと
整理整頓されていて、
仕事はしやすそうです。

こちらは手作りの道具。がしかし、
これは全て、田谷さんと親しい、
そしてH.worksでもお付き合いのある、
陶芸家の増田勉さんが、田谷さんの
ために作って下さった物だそうです。
どれも綺麗で、よく出来ています。
実際使いやすく、この道具のお陰で、
形やつくりが良くなったり、
技術が向上しているそうです。
いい人に田谷さん囲まれています。
切り糸、コテ、茶漉しを作る道具。削る道具。

手の込んだ象嵌。この碗の
模様は、3つの道具で描か
れているそうです。鉛筆に
くしまではわかりますが、
もう1つ、それは意外な物
でした。大き目のカレンダー
には、紙をまとめる金具が、
上に付いてるのがあります
よね。あの金具の断面を
押し当てて、模様にしている
んだそうです。創意工夫で、
何でも道具になるんですね。

まだこれから窯に入れ、会期直前に
出来上がる物もまだあるそうですが、
工房には、もう既に用意していただいる
ものがあり、少し見せていただきました。

青木亮さんが使われていた薪窯に、
青木さんをよく知る作り手の方々が、
年に1度火を入れ、窯焚きをされて
います。今回はその薪窯で焼かれた、
いつもとは少し違う趣の器をご用意
下さっていましたので、それは、是非
会場でご覧いただきたいと思います。

下2点は新作の灰釉の碗
(上から見たところ)になります。
青味がかるグレーと、淡い
サーモンピンク。偶然に
出来た色味を、敢えて狙らい、
作るようになったそうです。
ですが、焼成方法がかなり
難しいいんだそうです。
とても綺麗な色で、
これは自然光で撮らねばと、
表に移動したのですが、
いまいち上手く撮れず・・・ 
本物は、是非こちらも会場で

田谷さんのお母様が焼いたパンと、山で採って来られた野ぶきを炊いたものや、
お家で作ったスナックエンドウなどを、田谷さんの器で出して下さり、
他では味わえない味に感動していただいたのでした。
お父様が作られた野菜、お母様が手を掛けた料理が盛られ、
家族皆が気負わず毎日使える事を念頭におき、まずはごくごく身近な人へ向け、
田谷さんは器を作り始めたのだろうと感じました。だから、機能性をきちんと
考えた上で、造形的な美しさが表現されているように思えます。
事実、[使って良かった]と、お客様にいただく声はとても多いのです。

丁寧に作られています。

アザミ、シモツケ、アスチルベ、スモークツリー、ガーベラ、スイートピー、ナルコ、コレオプシス、
ニゲラ、ミント・・・ 名前の分らないのもあり。庭には、気付いただけでも、ミヤコワスレ、ウツギ、
アジサイ、ヤマボウシ、ユキノシタ、ナンテン、リョウブ、フウチソウ、ギボウシ、ゼラニュウム・・・ 
これはほんの一部で、まだまだありました。植物の生命力に溢れている田谷家でした。

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[番外 癒しスポット・田谷家の庭]