小田中 良江 ・ 河上 智美 ガラス展

2005/5/14(土)−22(日)
(会期中無休)
[作家在店日:14]

陽気のいい4月中旬、茨城県・つくば市にある、
河上さんの工房で制作をしているお二人を訪ねました。
花粉に侵され、苦しみの真っ只中の3人(私含め)は、
ティッシュで鼻を押えてのご対面となりました。

お二人は、石川県の能登島という島にあるガラス工房で、
宙吹きを学び、その時の制作のパートナーであり、
またその時の寮で、同部屋だったという二人なのです。
「正面切った喧嘩をよくしましたよ」、と言う河上さん。
聞くとささいな事が原因の喧嘩ばかりで、笑える話でした。
その後はそれぞれ、違う東京のガラス会社に勤めるのですが、
仕事の内容はほぼ同じ、辛い修行時代と言っていいようです。
感覚を磨いた時間、そして同じような経験を共有し、
互いの事もよく分かっているようです。
それぞれの表現が、どうこの空間でまじわり、また響き合うのかを、
どうぞご覧になってみて下さい。
また、ガラス器だけの展示は、H.works初めとなり、
その点も楽しみになっております。

ガラスが溶かされている炉です。
1300度前後あるそうです。
炉の前に立つと、
熱いのは当たり前ですが、
感覚としては、
もう[痛い]という感じです。

竿に溶けたガラスを巻きつけます。
作る物の大きさを考えて、丁度いい分量を
取る事が、まず難しいそうです。
工場勤務時代、ベテランの職人さんに、
この下玉を取って渡すというポジションを
かなりしたそうです。上手く取れず、
どやされる事もあったとか。

2

竿から空気を送り込み
ガラス玉をふくらませます。

その頃小田中さんは、器の底を
研磨する仕上げの作業中。
本来なら、吹いている河上さんの横で
サポートするはずらしいのですが、
この日は工房片隅で黙々と、
急ぎの仕事をしていました。

吹いてます。吹いてます。
そして、「オダナカちゃーん、○○と
○○持って来てー」と大きな声で
叫んでいます。

慌てる様子もなく、小田中さんは
頼まれた物を持ち、駆けつけます。

小田中さんに、木のこてを
底になる部分に当ててもらいます。
河上さんは、余分なガラスを
はさみで切っています。
飴細工の様・・・

竿との接着部分に水をつけ、
竿をたたくと、器ははずれます。

私も吹かせていただく事に・・・へっぴり腰で、恐る恐るやってます。
ガラスの玉があまりにも熱くて、「熱い!熱い!」と騒ぐ私を、
横で二人がゲラゲラ笑います。「離れればいいんですよ」とあっさり。確かに・・・
吹いていても、竿の先でどのぐらいの大きさになっているのかが、
よくわからないんです。また、竿を転がすという、左手の役割も重要で、
これまた難しい!形を思うようになどならない・・・
「これで難しい注文できなくなったでしょ!?」
となんだか嬉しそうに河上さんが言いいます。
小田中さんがすごい枚数を撮ってくれたのですが、
どれも険しい表情になっています・・・手取り足取り、河上さんありがとう!

もちろん、細かい工程がもっともっとあり、これはだいぶ省いております。
それから、河上さんは帽子をかぶっているのではありません。
髪をタオルですっぽり包み込んでいるのです。気合が入っています!

今回、お二人の略歴を見て少し驚いた事がありました。
以前、能登半島を旅行した際、、能登島に渡り、
お二人がいたというガラス工房の見学をした事がありました。
それが’97年の事で、丁度お二人がそこに居た年になるのです。
もしかしたら、お二人がガラスを吹く姿をもう既に、
その8年前に、見ていたのかもしれないと思いました。
誰とも知らずに・・・

要望に応え、その場で器を作って見せてくれると言う河上さん。
さっきまで、花粉でグッタリしていた河上さんが、炉の前では花粉が焼けるらしく、凄い集中力を見せます。
手際良く、作業にはリズムがあり、無駄の無い動きです。見ていて気持ちがいい。
また、時には竿をバトンの様にグルグルと大車輪にし、大道芸でも見ているよう。
聞くと河上さん、普通人が10分かかる物を、5分で作っているそうです。
その勢いが、ガラスの造形にも写し取られている感じがします。
そして、お願いしたお皿を、3通りのやり方で作って見せてくれました。これは面白かったです!
普通に吹いて。途中でハサミをいれるパターン。そして吹きではないピンブローという技法で。
展覧会では、その内の1つの方法で出来たお皿を、ご紹介する予定です。

(上)近くには筑波山。桜が咲いていました。
(下)田園風景の中にポツンとある工房。

[番外]

小田中 良江 (おだなかよしえ)

1974年 愛知県生まれ
1997年 能登島ガラス工房
        宙吹きガラス講座 受講
1998  
〜2001年 井田硝子株式会社 勤務
2002年〜 2人展、グループ展行う

河上 智美 (かわかみともみ)

1974年 東京都生まれ
1997年 能登島ガラス工房
        宙吹きガラス講座 受講
1998
〜2001年 株式会社松徳ガラス 勤務
2003年 茨城県つくば市に
        サツカベ硝子工房を開く

[その日の様子]

練乳の様なとろんとしたクリーム色を、特徴的に使う小田中さん。形も丸みのある優しいもの。
H.worksでご紹介するのは、今回が初めてとなります。

クリーム色でも、あえて色むらを出し、透明感のあるグラデーションを作るは河上さん。
創造豊かに、そして挑戦的に形を作りだしています。

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