須藤拓也 陶展

2012年6月16日(土)−23日(土)
会期中無休   作家在店日:16、17、18日

鳥のさいずりが響く苔むす森。あざやかな緑を背にして立つ鹿と、目がちらりと合いました・・・
描く楽しさが伝わる須藤さんの絵付けにいざなわれ、一瞬の旅をします。
様々な手の焼物に取り組みながら、表現の幅を広げられている須藤さん。
[大事にしたい]気持ちが芽生える、丁寧な仕事の見える器です。
染付を中心に、色絵、ルリ釉、白磁、鉄絵などを今展ではご用意いただきます。

国分寺で制作をする須藤さんを訪ねるのは、前回の個展以来、1年8ヶ月ぶりでした。
国立駅の北口から南口に出て、旭通りと言う国分寺に続く道を車で走ったのですが、
知っているつもりの街の激変に驚愕してしまいます。中央線の高架に伴う国立駅周辺の変化、
新しいお店、新しい建物、新しい道・・・ 浦島太郎になっていました。
それとは対照的に、「何も変わっていませんよ」とご本人から伺っていた通りだった須藤さんの工房兼お宅。
時間はあの時から止まっているのかと錯覚してしまいそうなくらいに・・・
家電の無い暮らしもそのままでしたし。でも1つ、時間の経過を教えてくれるものがありました。
それは須藤さんの器です。新作もありましたから・・・ 

左上:左が完成品。右側の物は、黄色いラインが未だ
    入っていません。青いラインは呉須という顔料で、
    素焼の後に引き、もう1度焼きます。黄色いライン
    は、その後上絵絵具で引き、再び焼いて、左の
    猪口の姿に。計3回窯に入っているん事になり
    ます。こんな風に、部分的に下絵と上絵を施し
    ている器が須藤さんの物にはあります。
右上:唐草模様の染付碗。新作です。素焼きに筆を
    走らせたこの段階では、色の濃淡がよくわかり
    ません。そのへんは、経験と勘なんのでしょう。
右下:六角鉢の色が微妙に違っていますが、手前は
    素焼の物。奥と中央は釉薬がかかっていますが、
    配合を変えた鉄釉らしです。これから本焼です。

須藤拓也 すどうたくや

1972年 福島県生まれ

明治大学文学部中退後、
多摩美術大学二部デザイン学科卒業

グラフィックデザインの仕事に
就いた後、
愛知県立窯業高等専門学校で
陶芸を学ぶ

現在、東京国分寺市にて制作

[番外・いいところ]

[番外・庭の花]

新作の器です。左画像、染付の小皿と小鉢。右画像、鉄絵の角小鉢、2サイズです。こちらは手びねりの物。
器をいくつか並べた時に、須藤さんの器を加えると奥行きができ、テーブルが引き締まります。

この4点も面白くお使いいただけて、
間違いなく、そんな効果があるでしょう。

他にも、今まで当店ではご紹介していない器が色々。マグカップや、定番で人気の長皿にも新柄がありました。
これからルリ釉の物の窯焚きもあるそうです。そして間に合えばの、店主のリクエストもしてきました。
お気づきの方もいらしゃるかもしれませんが、須藤さんの染付には鮮やかに発色している物と、
トーンが落ち着いた物とあります。これは釉薬の違いではなく、使われている土に違いがあります。
磁器土と陶土を合わせた半磁器。こちらは生地が白く、主に形をシャープにだしたい、型おこしの物に使い、
もう1つは陶土だけで、少し赤味のある焼きになり、こちらは轆轤でひく物に使っているそうです。
なるほどです!角皿などは半磁器で、今回のDMに写っているような器は陶土というわけです。
中国、ペルシャ、タイ、安南の焼物が好きだと言う須藤さん。どこかにそんな薫と、無国籍な感じもただよいます。

[出来ていました]

[制作途中]

[工房]  広くは無い工房。そのせいもあり、きっと物は増やせない増やさないとなるのかもしれません。
      スッキリとしていて仕事はしやすそうです。(しきりに掃除はしましたとおっしゃっていましたが)
     左上:試験的に作った物やサンプルだそうです。「こんなの作ってたっけ?」と、
         今まで見た事の無い物がちょこちょこあり。非売品のレア物がここにはあると言う訳です。
     中央:電動ではない、足で蹴って回す轆轤を須藤さんは使用しています。
     右上:変りなく健在でした。小さい窯で、休む暇なくフル稼働しているらしいので気になります。

神田・神保町に工芸専門の古本屋
があるそうで、そこで購入の[古染付
と呉須]という本や、図書館で借りて
いる、動物がモチーフの工芸品の
写真集(立派な物)を見せて下さる。
須藤さんの今の焦点も見えてきます。
器の絵柄は写しではくオリジナル。
本はバランスや組み合せの参考に。
鹿を描くきっかけは、動物園に
行かれて見たからのようですよ。
葛さくらと麦茶を須藤さんの器で
だしていただきました。おいしい・・・

↑時々こんな風に寝そべっている
そうですよ。 → 瓦の陶片があった
りするらしく、見つけている須藤さん。
またしても怪しい人に見えます・・・

前回伺った時は、須藤さん宅の北側にある、[お鷹の道]と言う清流沿いの小道を
散策させていただきましたが、今回は須藤さん宅の南側にある[武蔵国分寺跡]に。
一見ただの野っぱらに見えますが、古代寺院跡で、国の史跡に指定されている場所。
広大な土地で、高くそびえる大木が何本もあり、緑をかけぬける風が気持ちよく、
店主はご機嫌に・・・ あまり整備がされておらず、開放的なのもまた良かったです!
(まだ発掘調査は続いているよう) そして、ただの岩かと思ったものが金堂跡だったり
するんです。右上画像に写るのは七重塔の跡でした。春、桜が咲く頃もいいそうです。
こんな自然豊かな所が、歩いて1分もしない所にあるなんて羨ましい。

変化は器以外にもありました。
前回訪ねたのは秋だったので、
その時、須藤さん宅の庭に
なかった花が咲いていました。

[大]の字形の花、大文字草(左)に、
ほんのり色づき始めていた
紫陽花(中)、そして南天は蕾が
ふくらんでいました(右)。

惑わされず、欲張らず、自分の価値観で歩まれていると言える須藤さん。いつもの須藤さんと、前回と今回の訪問も合わせ、
店主が知る須藤さんの姿に、虚栄を感じるところがまったくありません。[そのまま]です。(自覚されていないかもしれませんが)
立川と国分寺。近い事もあり、自転車を走らせ、店によく顔を出して下さり、そして並ぶ器を熱心に見て帰られます。
須藤さんの誠実な人柄は、器によく表れているでしょう。

exhibitionのページに戻る