長谷川奈津 陶展

2012年10月13日(土)−20日(土)
会期中無休
作家在店日:13日、14日



パズルのピースがはまるように、
いつか見た景色と重なる表情。
穏やかに、大きく流れるものを、
包んだ手は感じています。
腕をふるわなくても、普段の料理でも、
盛映えがし、一味ちがう気にもなります・・・
深く考えられた食器としての形が、
簡素な形の中にはしっかりとあるのです。

鉄釉や林檎灰釉。そして粉引に飴釉の器。
小ぶりの花器色々も並びます。


『雨だけにはなりませんように・・・』
願いは叶い、台風が前日に去った日、
神奈川県相模原市に工房を構える
長谷川さんを2年ぶりに訪ねました。

こちら→、庭先にある窯場です。なかなか珍しいと思うのですが、
長谷川さんは窯を3つ持っています。しかも、灯油窯(画像左側)、
ガス窯(小屋の中)、そして電気窯(右側)の3種類です。豊かな
表情の焼成ができ、時折薪も放り込んで焚いているらしいのが
灯油窯。窯の中には直接炎が当る[おいしい場所]と言うのがある
らしく、そこには主に1点物などを置いているようです。熱量が
ありしっかり焼き締まるのはガス窯で、長年使い、扱い慣れて
いるのはこちらだそう。そしてコンピュータ制御され、3台の中
では最新なのが電気窯。ある程度お任せが出来るそうです。
長谷川さんの焼物はこの3台を駆使し生まれていると言う訳です。
前々夜の台風の最中も、吹きさらしの灯油窯には火が入っており、
物が飛び交い散乱する中窯焚きをされたそうです。無茶な感じが
しますが、「ドリフのコントのようだった」と笑ってその様子を話す
長谷川さん。たくましいです。(お若い方、ドリフってわかります?)

丁度鉄釉の物が焼き上がり、
窯出しの途中になっていたガス窯。
(画像左と中央)
炎を噴き出す灯油窯(画像右)の
中にも鉄釉の物が入っているそう。

長谷川 奈津 はせがわなつ

1967年 東京生まれ
1994年 東京芸術大学大学院
       陶芸専攻 修了
1997年 神奈川県相模原市に築窯

台所の一角が長谷川さんの書斎になっていました。
高く積まれているのは全て焼物の本。茶碗のものが
多いそう。購入先を伺うと、地方に行った際立ち寄る
美術館のミュージアムショップだったりするそうです。
最近見に行き良かったと言う、出光美術館の展覧会、
[東洋の白いやきもの]
(中国・朝鮮・日本の白磁を紹介)
図録を見せて下さいました。ページをめくっていると、
「それ好きです」、と長谷川さんが言われた物は、
青白磁で、前面に花の彫文様が大胆に施された皿。
長谷川さんの仕事とは結びつかず、意外だと話すと、
エッセンスを感じとりたいのだと言われました。
技法や表現に違いはあっても、習う要素はあり、
核心となる部分には響き合えるものがあるのでしょう。

今回の鉄釉には、今までにない色味を狙っているようです(密かに)。条件を整えても、天然材料で委ねる部分も多い焼物。
これがなかなか思い通りにはならない・・・ この日も腕を組み、思案をめぐらす長谷川さんの姿がありました。

左/長谷川さんが見つめる先にあるのは、窯焚きの経過と変化を、温度を縦軸、時間を横軸にした
グラフで記録しておく物。これは企業秘密なのではと、撮影禁止になるかと思いきやOKでした。
毎回こうしたデータを残し、次へと繋げる大事な作業の1つのようです。
右/窯焚き途中で、焼きの具合をチェックする[色見]と言われる陶片。表面だけでなく割って土の色でも
判断する為、こんなカケラの状態です。でもこれがまたきれいです・・・

碗や鉢など、焼き上がっていた
物の一部を見せていただきました。
中間色のやわらかな色。
土と形に馴染み、深い色合です。
「いいねいいね」を連発する店主・・・

土は、常滑、信楽、伊賀の物。
釉薬は鉄釉や林檎灰釉、
松灰釉に粉引、そして飴釉。
同じ土と釉薬でも焼成方法を
変えたり、違う土に同じ釉薬を
かけたりとされています。
加えて、化粧土の有無もあり。

右上画像の3点は、全て林檎灰釉。
でも全く違う焼き上がりなのは、
左と中央は同じ土でも焼き方に違い
があり、右は2点と土が違い、
原土で鉄分が多い物なのだそう。

形の大事さの前置きがあり、でも「色が好きなんです」
どうしようもない事の様にそう言った長谷川さん。
化粧土や釉薬が重なり織り成す色彩に惹かれるのだと。
油彩画の様に見えた長谷川さんの器との出会いがあった
店主には、謎が解けたような長谷川さんの言葉でした。
質感や色に執着する面と、造形力の確かさがあり、
「美しい」と思わせてくれる長谷川さんの器があります。
絵画が好きで、草花を愛でるご両親だと伺い、
そこに長谷川さんのベースもあると感じたのでした。

長谷川ファミリー
増えていました・・・
新入りの[ちび]です。

こちらも出展予定のお品。
形様々の小壺類(写真ボケ
ててすいません)。
縁側に並んでいたのは、
鉄釉と林檎灰釉の物。
使いやすくて店主おすすめ
の7寸浅鉢もありました。

工房内です。窯場は、このガラス窓を開けた目の前に。轆轤は電動と蹴轆轤の2台。

電動轆轤の所にあった椅子
の上。可愛い座布団です。
ひょうたん柄とコマ柄。
染色家のお友達のものだそう
ですが、『長谷川さんぽいっ』
と思えた物です。

制作途中の物もいっぱい。筒碗、飯碗、丼、片口、豆皿、大鉢に壺・・・ 焼き上がりは、展覧会でご覧になって下さい。

左/長谷川さん宅の裏手。
蔓をのばす朝顔とフウセンカズラ。
ハート形の模様がある、
フウセンカズラの種をいただきました。
来年の今頃、当店のベランダ
にも黄緑のボンボンがたくさん
ぶら下げっているかも・・・
右/長谷川さん宅表。
目の前に小高い山あり(名前不明)。
手前のバケツに、釉薬にする為の
灰を沈殿させている。

exhibitionのページにもどる